Akit Physical Therapy Association

子供のリハビリテーション 子どもの障害とは? ~概論1~

~はじめに~

障害のある子どもたちへの援助目標はノーマライゼーション理念の浸透とともに大きく変化し、療育は、「機能障害の改善」だけでなく、「障害があるための 育ちにくさの軽減」や「地域社会で豊かに生活できる人格の育成」を求められるようになってきています。つまり、「歩ける」「話せる」という発達指標の向上 だけでなく、「ソーシャルスキルや社会性、生きる意欲の育成」が目標となり、療育における育児援助や相談業務が大切になってきています。山川1)は肢体不 自由児通園施設の理学療法士は、
1)障害像の変化と障害の重度化への対応
2)多様な障害内容やニーズの把握
3)在宅生活を支援する地域リハビリテーションの導入
4)ケアマネジメントの考え方の導入
5)小児理学療法効果の評価基準の確立
の5点を今後の課題として提案しています。
そこで、まず始めに療育の理念、発達障害の概念について触れ、特に、子どものリハビリテーションの特徴・地域領域システムと理学療法士の役割について述べたいと思います。

1.「療育」の理念-わが国において-

「療育」という用語は、「肢体不自由児の父」と呼ばれている高木憲次によって提唱されたものです。
高木は療育の定義について“療育とは時代の科学を総動員して肢体の不自由を出来る丈克服し、それによって幸いにも快復したる快復能力と残存せる能力と代 償能力の三者の総和(これを復活能力と呼称したい)であるところの復活能力を出来る丈有効に活用させ、以て自活の途の立つように育成することである”2) と述べています。
現在では、療育という概念は、狭義には「肢体不自由」児・者のみならず、心身の発達に障害をもつ児・者への治療・教育・社会的援助を目的とする専門ス タッフによる総合的アプローチを指しますが、広義には、「リハビリテーション」の概念の発展と軌を一にし、保護対象者としてではなく、身体・精神・社会的 に著しく不利な状況における生活主体者としての人間性の回復あるいは獲得の理念をも意味していると言われています。
いずれにせよ、高木が提唱した療育の理念および療育の体系には、今日、わが国で広く一般化されている治療教育、発達(障害児)臨床および児童福祉の分野 における多くの理論と実践の源流と言えるのではないかと思います。そのことが、脳性麻痺や筋ジストロフィー症といった病名に対応した治療といった医学モデ ルによる狭い枠組みではない肢体不自由という今日の障害モデルに対応した先見的な視点として評価されていることに繋がっているのではないかと思います。

2.発達援助を支える体系的原理としての「発達段階」および「発達課題」

高木の療育論の特徴は、治療のみならず教育および職業という生活全般にわたる総合的アプローチを示し、彼が提示した体系的原理は、それを横軸におきなが ら同時に縦軸としてきわめて現代的テーマである、人の長い生涯を見通しての「発達段階」と「発達課題」の概念を基軸にしているところにあります。このこと は北原3)が提起している発達障害児の長期療育の考えもその流れに沿ったものと解釈することができます。北原は運動障害重度化の過程(図1)を一次障害と 二次障害の分け脳性麻痺(CP)のリハビリテーション医療を検討する場合、「医学モデルから障害モデル」への複眼的な視点を持つことの重要性について触れ ています。

運動障害重度化への過程

3.発達援助の視点から生まれた「発達障害」の概念について

発達期に起こる心身の障害に対して「発達障害」という用語が用いられるようになったのはつい最近(1980年代)のことだと言われています。「障害」や 「問題」を発達的に見ようという視点が社会的に了解されてきている流れの中で登場してきた言葉ですが、その定義や概念規定にはあいまいさを多く残していま す。
発達障害という語が公式に登場したのはアメリカの公法上であるといわれています。
1970年に「発達障害法」(Developmental disabilities Act of 1970)においてはじめて定義付けられ、1975年の改変を経て、1978年に再改変されるています(山下巧、1985)。
その基本的特徴として、松野豊(1979)は次の二点をあげています。
“第1の特徴はそれが障害種別を示さない包括的用語であるという点である。ではなぜ包括的用語が用いられたのか。ひとつには、障害がきわめて多様であ り、また同じ一人の人の中に同時に異なる種類の障害が発生する頻度が高いことによる。障害の種別でサービスをきめると、障害が多様なゆえに漏れてしまう者 がでてくるし、また障害が重複しているときには、いずれのサービスも受けられないということがよく起こるのである。また、当人にとって実際に有効なサービ スという点から見るとき、その人がどんな障害種別かを判定するより、むしろどんなサービスを必要とするかを判定する方が意味があることによる。(下線部筆 者)
発達障害という用語のより基本的な第2の特徴は、単にその障害が発達期に生じたということを示すだけではなく、障害を発達においてみる、つまり障害はダイナミックに変化するものであるという観点をその用語が示していることである”
以上のことから、発達障害という概念は、常態化(normalization)あるいは主流化(main streaming)などと呼ばれる新しい社会福祉の理念に応えて、行政的、施策的に登場した実際的な背景をもつ用語であることがお分かりになるでしょ う。発達障害という用語を新しく用いることにより、これまで障害別に独立して機能していた機関をひとつに統合し、現実的な臨床的、福祉的援助を中心に据え た対策がとられるようになった点がより発展的と考えられています(以上武藤4)の論文より引用)。

秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻
理学療法士 工藤 俊

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