Akit Physical Therapy Association

子供のリハビリテーション 子どものリハビリって? ~2~

5.どんなことをするの?

理学療法では、基本的には正常運動発達の順序に沿って進めますが、一般に筋の緊張が低い(力が入らないような)こども達には、姿勢を保つような活動を促 し、運動の自発性を引き出す、筋の緊張が高い(力が入っている)こども達にはゆっくりと動かしリラックスさせる、支えることよりも動きを出すことを重視す るようにしています。

ここでは、運動発達の遅れに対するアプローチとして簡単なハンドリングを取り上げます。
* 印は実際に相談や訴えとしてよく聞かれるもの、また、保育士や地域の保健士から相談を受けることの多い内容を載せています。(月齢や疾患によって全てのお子さんに当てはまるわけではありません)

1)はいがい背臥位(仰向け)

おもちゃなどを顔の正面(せいちゅう正中)で見ながら手を伸ばすように促し、手と手、手と足などの協調運動を重視します。そのために必要なお尻や足の持 ち上げを引き出し、横へ転がったり、戻ったりする中で腹筋群の働きを強化します。この姿勢では左右バラバラな動きから顔、手足が真中へ集まってくるように おもちゃの見せ方なども工夫します。手で身体を触わることで、体がどこからどこまでなのかといった感覚を体験しています。
* おもちゃに手を伸ばす、目で追う、音に反応する様子がみられにくい。
* 手や足を床につけたままで持ち上げられない。
* 足が交差してしまう。
* 反り返りが強い。顔が一方を向いたまま反対側を向くことができない。

はいがい背臥位(仰向け)

2)立ち直り反応、バランス反応

この反応が、寝返りやお座りの安定性に重要な役割を果たします。様々な姿勢で促すことができます。抱っこの仕方や、寝ている姿勢から起こす時なども応用で きます。過度に努力をさせると、頑張りすぎて他のところに力が入ったり、拳を握ってしまい、かえって手が使いにくくなるなどの危険があります。たくさん傾 けるより、少しの傾きでバランスを取れる方が、全身が協調して働きやすいかもしれません。

立ち直り反応、バランス反応

3)ふくがい 腹臥位(腹ばい)

頭の持ち上げと手での支えを促します。両腕での支持から片方での支持へと体重移動を行い、腹臥位でおもちゃに手を伸ばせるようになります。これがずり這 いへとつながっていきます。ここで、こども達は仰向けという関わられる姿勢から自ら外界へ関わる姿勢へと変化をとげます。
  初めてこられた方からは「腹ばいを積極的に行っている」というお話はあまり聞いたことがありません。苦しそう、突然死症候群の心配、まだくびがすわって いないからなど、なかなか行う機会が少ないようです。でも家族の方が見ている時なら大丈夫だと思われますし、抱っこしながらでもできる姿勢です。腹臥位は 背筋と腹筋が協調して強化され、肩の安定性にもつながる姿勢で、手や足を上手く使うための基盤を作るために非常に重要です。
* 腹臥位自体をとても嫌う。
* 頭が上げられない。反り返ってしまう。手が退けてしまう。

ふくがい 腹臥位(腹ばい)

座位(お坐り)

4)座位(お坐り)

頚や体の立ち直りを促します。手で支えないで体を伸ばして座位をとることは、遊びや視野の広がりに影響します。重要なのは、座位から他の姿勢へ、他の姿 勢から座位への変換です。坐りっぱなしのこどもは、座位は非常に上手ですが、姿勢を変えられず、這ったり、歩行に至るのが遅くなったりする場合がありま す。お座りは、何かをするための姿勢なので、じーっと手をつかせて頑張って座らせるよりは、少しお手伝いをしても手や目が自由に使える方がいいでしょう。
* 坐ったまま移動し(シャフリングといいます)、座位から他の姿勢へ姿勢を変えられない。
* 腹這いをせずに座ってばかり(座らせてばかり)いる。
* 後ろに倒れてしまう。足を前に出して座れない。

四つ這い

5)四つ這い

腕で支持した腹臥位から四つ這い位へと移行します。上肢の支持性、体幹の安定性の改善、骨盤周囲筋の筋力強化をはかります。膝関節を屈曲させるのが苦手 なこどもは四つ這い移動が難しく、歩行時も膝を曲げずに歩いたりします。四つ這い移動での手足の交互性・交差性の動きは歩行に深く関わっていきます。ハイ ハイは手や足の交互の動きや、しっかりと関節で体重を支えることなど重要な運動ですが、最近はハイハイをあまりしないで歩くお子さんがたくさんいらっしゃ います。家屋環境の変化で、ハイハイで移動できる広いスペースよりも、テーブルやソファなどの立っちに適した環境に変わってきているから、ともいわれてい ます。
* 移動手段がハイハイではなく、いざり(シャフリング)。
* 膝を曲げないでハイハイする。
* ハイハイをしないで立つ。歩く。

6)膝立ち位

四つ這いから膝立ちを経て立位へとだんだん高い姿勢へと変わっていくための途中の姿勢です。体重を移動させて片膝立ちから立ち上がります。膝立ちに限ら ず姿勢を変えるときには体重移動を必要とします。体重移動にはバランスを保つことが同時に必要となり、この時身体やくびをねじったりする複雑な動きが必要 となります。
* 膝立ちから両足同時に立ち上がる(通常は片足を立ててから)。

膝立ち位

7)立位

立位は最も視線の高くなる姿勢です。
筋緊張の低下しているこどもや、足底をしっかりと床につけて体重を支えるのが苦手なこどもには、足底全体を床につける練習をします。徐々に体重をたくさ んかけていって、足や体がびしっと支えられるように促します。前に寄りかかった前かがみの姿勢から、だんだん手の支えが要らない姿勢へと変えていきます。 立位で手が自由に使えるためには足や体の安定性が必要です。体重移動を促し、つたい歩きやわたり歩き、独歩へとつなげます。
1人で立つのが難しいお子さんも(股)関節や骨を成長させるために体重をかけることは大変重要です。
* 立たせるとつま先立ちになる。両足が交差する。
* 足をつけるのを嫌がる。
* ハイハイをしないで立つ。

7)立位

8)歩行

はじめは手をつなぐなどのお手伝いが必要ですが、徐々に介助を減らしていきます(両手から片手へ、またえきか腋窩部(わきの下)や骨盤での介助など介助 部位を変えて行います)。足をきちんと支えることも重要ですが、一歩一歩考えて足を出すより、自動的に交互に振り出せるように練習します。独歩が可能に なったら、ものを持っての歩行、方向転換、段差昇降、屋外歩行など、より全身のバランスが必要な応用動作を促します。
歩行器の使用についてはよく質問されますが、足をきちんと支える練習にはあまりつながらないように感じています。乗せっぱなしにしていると、つま先で蹴 ることが多い子はふくらはぎの筋肉がパンパンに硬くなってしまうこともあります。ただ、移動を楽しんだり、経験したりすることはとても大切ですし、お母さ んが家事をする間、安全に過ごすためには時間限定で使ってもいいでしょう。
* 歩き方がおかしい
* 転びやすい。段差の昇降が難しい。
* 踵がつかない。

9)抱き方について

一般に麻痺のあるお子さんは、足を閉じやすいので、足を開いて抱くようにします。反り返りの強い子は丸くすると反りにくいのですが、股関節を曲げて、で きるだけ体はまっすぐ、左右対称になるようにします。麻痺のない子は、重力に抗した姿勢が良いでしょう。抱き方ひとつとっても運動の発達に大きく影響を与 えます。

10)active touch(アクティブタッチ)!!

運動の発達と感覚の発達は切り離して考えることはできません。受身的に触られる場合と能動的に触るのとでは、得られる情報の内容が量的にも質的にも違う のだそうです。赤ちゃんもバタバタ動いていて手に偶然触れたものをぐいっと引っ張ったり、触れたものを「なんだろう?」と思ってもぞもぞ手を動かしたりし ています。自分から触っているのです。それが頭の向きを変えることにつながったり、仰向けから横向きになるなどの運動につながったりしているのです。一人 で動くのが難しいお子さんも触れさせるだけでなく、自ら感じることができるようにお手伝いしていかなければなりません。運動を促すには感覚も大事というこ とです。


◎以上のことはこどもや、またその段階によって必要とされることが異なりますので、医師や理学療法士、他の専門職と相談しながらすすめていく必要があります。
運動や姿勢はひとつずつ独立して獲得するもではありません。それぞれが影響しあって総合して1つのものができるようになるのです。ご家族の方がしてくだ さっていることは、すぐ次の日にできるようになるわけではないかもしれませんが、こども達に多大な好影響を与えているのだということはよく実感するところ です。
できたことが次の日も同じようにできるとは限らない、と思いませんか。私たちもトライ&エラーを日々繰り返して色々なことができるようになっているので す。暗闇でも自分の家の階段は昇れますよね。初めての時の事は覚えていませんが、きっとトライ&エラーを繰り返して運動や感覚を習得していっているのだと 思います。こども達もまさに同じなのではないでしょうか。

6.秋田県では?

秋田県では秋田県太平療育園と秋田県小児療育センター(どちらも秋田市)で子どもを対象としたリハビリを行っています。ただ赤ちゃんから幼児期を経て、 学校、社会へ、と考えると、それぞれの地域での生活が非常に重要で、生活の大部分を占めるといっていいでしょう。近所の友達や学校、お店や病院などなど、 ずっと暮らしていく地域でどのように過ごしていくかはこども達に限らず我々みんなの関心事項です。
地域の病院でも子ども達をみてくれている病院はたくさんあります。その地域のことを一番に理解し、幼稚園、保育園、学校などとのつながりも密で大変熱心に指導して頂いております。何より、ご家族にとって近くに頼れる場所が存在するのは心強いことでしょう。
最近は、学校や、幼稚園、保育園の先生方が熱心に見学にこられ、実際にどんな風に接したらよいか、何をしたらだめなのかなど、それぞれの地域に持ち帰っ て、日常生活に組み込んでくれています。以前より保育士や学校の先生、地域社会との連携が図られているように感じています。
また、こどもに関わるすべての人々、作業療法士や言語聴覚士、看護師など他職種とも同じ方向を向いて意思疎通を図っていかなければ、日常生活で実践でき るリハビリテーションは実現しないと言われています。どんな手順を踏んでも結果としてこども達が何かをできるように努力をしなければなりません。

7.おわりに

こどもの頃にプールの試験ってありませんでしたか。スイスイと泳げる人は別ですが、20Mのラインが見えた時は「あともう少し!」と自分を励まし、ゴー ルの壁に何とかタッチした記憶があります。ゴールがその位置から絶対に動かない、という信頼をもって(というかそんなことは思いもしないのが現状ですが) 距離を計り手足を動かして必死でした。
運動を誘導するとき「ここまでおいで」と言いながら、上手に進んでくるとついついバックして、もっともっとと求めてしまいます。せっかく信頼してきてくれているのに、タッチしようとしたら空振りなんて、それは「裏切り行為」なのかもしれません。
こども達におこる変化は小さなものかもしれません。小さなことの積み重ねが次第に新しいことの獲得につながっていくように、理学療法士自身がしっかりとした知識と技術を身に付けていかなければならないのだと思っています。

8.引用・参考文献

1)Regi Boehme著 芝田利生、櫻庭修共訳:赤ちゃんの運動発達 絵でみる治療アプローチ、共同医書出版社、1998
2) LaVonne Jaeger 著 弓岡光徳 他訳:乳幼児の家庭療育プログラム、医師薬出版、1990
3)Rona Alexander,Regi Boehme,Barbara
Cupps編著 高橋智宏監訳:機能的姿勢―運動スキルの発達―、共同医書出版社、1998
4) Nancie R.Finnie 梶浦一郎 鈴木恒彦 訳:脳性麻痺の家庭療育、医師薬出版、1999
5) 岩村吉晃:タッチ、医学書院、2001
6) 原泰夫:脳性麻痺児の理学療法、PTジャーナル37、2003

小児療育センター 通園訓練部

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