Akit Physical Therapy Association

子供のリハビリテーション 就学後はどうすればいいの?

◆ はじめに

私たち人間は乳幼児期~学童期~青年期~成人期~老齢期の様々な時期を経て年を重ねてゆきます。誰にとってもそれらの時期は重要で、それぞれの時期での 身体的・精神的成長や社会的な環境の変化と共に日々の過ごし方や社会的役割も異なります。その中で様々な経験を積み重ね、日々新しい発見をしていくよう に、障害を持つ子供達にとってもそれは同様で、それぞれの時期は非常に重要になってくるでしょう。そして同時に様々な変化もみられてきます。乳幼児期では ご両親やご家族が療育の中心となりますが、学童期に入ると学校という教育の場が重要となります。このため、そのライフステージによって比重をおくべきポイ ントも自然に変化していきます。
子供が大人になるまでの成長過程では、一人一人の生まれながらに持っている遺伝的な特徴(身体的・精神的性質)に加えて、いかなる育ち方・育てられ方を したか等によって異なった生活をし、異なった人生を送ることになります。よって、障害児・者のQOLの充実を支援していくためにも、リハビリテーションの 内容や重要な課題もそれぞれの時期でおのずと変化していきます(変化していかなければなりません)。
以上のことをふまえて「理学良報子どものリハビリテーション~就学後はどうすれば良いの?」に入っていきたいと思います。

就学にあたって

◆就学にあたって

就学(小学校~高校まで)にあたってご家族のみなさんがまず悩むのは、普通学校と養護学校のどちらに進むかということではないでしょうか。重度の障害を持つお子さんでは訪問教育も視野に入ってくるかと思いますが。
どちらに進むかを大きく左右するのは普通学校での受け入れの状況であると思います。以前は普通学校ではなかなか受け入れてもらえず、自宅から遠い養護学校へ入学せざるをえない状況であった様ですが、最近では普通学校での受け入れも徐々に増えてきています。
普通学校へ入学する場合には入学の1~2年前頃より学校側との連絡を密にとり、お子さんの身体的・精神的特徴を知ってもらうこと、設備面での調整、どの程度のサポート(移動時や食事、トイレなど)が受けられるか等をしっかりと話し合う事が重要になります。
まずは一度、普通学校と養護学校の両方へ出かけてみて学校の様子を見学し、学校の先生方と話してみることからはじめてみてはどうでしょうか。その上で、お子さんが無理なく過ごしていける方を可能な限りお子さんと話し合って選択すると良いと思います。 最終的に決定するのは医師でもリハビリスタッフでもなくご家族ですが、相談すると必ず良いアドバイスを貰えると思いますので遠慮せずに相談してみて下さい。

就学にあたって2

◆就学後は…

普通学校・養護学校のどちらに進んだとしても重要になってくるのは、学校と病院や施設、地域社会がしっかりと連携していくことです。学童期に入ると一日 のうち学校で過ごす時間が大半をしめ、家庭中心の療育から学校を含めた療育へと移行していきます。このため、リハビリスタッフも学校での様子を少しでも多 く知る必要があります。しかし、リハビリスタッフが学校へ出向くことは様々な制約があり、今のところ大変困難です。最近では学校の先生方がリハビリテー ションを見学にこられることが増えています。こういった機会は、先生方にリハビリテーションでどのような事をやっているのかを知ってもらい、実際にどのよ うに接すると良いのか、学校や日常生活でどのような事を行って欲しいのかなどを説明するのと同時に、学校での様子を学校の先生から直接聞く大変貴重な時間 として活用させて頂いています。そういった時間のとれない場合には学校や家庭での様子をビデオや写真でみせて頂くことも可能だと思います。
いずれにしても、就学中には身体的にも精神的にも大きく変化し成長する時期です。そこに修学旅行など大きな行事も含まれてきますので、 その都度学校・家庭・専門病院・地元病院間での連絡を取り合い、それぞれの不安を解消し、お子さんがそれぞれの時期を楽しく過ごしていけるよう考えていかなければならないと思います。 お子さん(もちろんご家族も含めて)への負担が大きすぎるようであれば、養護学校への転校を考慮していく事もよいと思われます。

◆リハビリテーションについて

秋田県で専門に小児のリハビリテーションを行っているのは秋田県小児療育センタ-と秋田県太平療育園の2カ所です。また、超早期療育の場として秋田日本 赤十字病院のNICU(新生児集中治療室:Newborn Intensive Care Unit)での取り組みも始まっています。その他に県北・中央・県南のそれぞれの地元でも小児のリハビリテーションを受けることが出来る病院が増えてきて います。そして、少しづつではありますが病院間での連携もとられるようになってきています。

先にも述べましたが、就学中は身体的・精神的に大きく成長する時期です。また、将来に向けて準備していく時期でもあります。このため就学中のリハビリテーションにおける重要な課題は、

1)なんらかの移動手段(独歩だけではなく、歩行器や杖、車椅子、電動車椅子、四つ這い、寝返りなど)を獲得し、長距離・長時間の移動を可能にする体力とスキルを身につけること。
これにより、学校内を自分で好きなように移動でき、行動範囲も広がるでしょう。

2)なんらかのコミュニケーション手段を獲得すること。
それぞれのお子さんの言語発達と上肢運動機能によって方法は異なると思いますが、絵カードや文字盤、ビックマックやメッセイジメイト、トーキングエイド 等お子さんがなんらかの方法で意志を伝える手段の獲得が重要になります。これにより、自分の意志を相手に伝えることができ、日常生活や社会生活が広がるで しょう。

歩行器いろいろ

3)教え方や方法を工夫すること。
(特に脳性麻痺児では)学習を進めて行く上で、運動障害だけではなく高次脳機能障害(字を読むことはできるが、書けない、絵が描けない、着衣を何度教えてもできない等)を配慮することが必要です。おぼえる気がない、やるきがないわけではありません。

これらをリハビリ、学校、家庭で連携して進めて行くことが大切になってきます。

学童期は安定した発育期にありますが、10才頃より第2次成長期に入り、急激に身長や体重等が増加し、成長にも性差が現れはじめます。また心理的にも少しずつ変化してくるでしょう。

学童期の発育曲線

★この時期では骨に対して筋肉の成長が追いつかず、関節がかたくなりやすいと言われています。このため、しっかりと関節を動かし、筋肉を適度にストレッチ することや補装具を着用することが大切です。また、長時間同じ姿勢でいることを避け、様々な運動(姿勢や動作)を経験し、活動量を増やし、筋力や持久力な ど体力をつけていくことが大切です。身長や体重の増加に伴って活動することがおっくうになり、大変になりやすいのですが、筋力や持久力、スピード、パワー などが発達しやすい時期でもあります。この時期にしっかりと動き、体力をつけておくことや様々な姿勢をとれる事(介助をしてでも良いです)が大人になった 時の貯金(変形・拘縮や痛みなど二次障害の予防や体力低下の予防、介護量の軽減など)になっていきます。

★精神的にも反抗期をむかえ、ご両親の思うとおりに事の運ばないことも多くなると思いますが、これも成長のうちです。買い物や旅行、外出など様々な社会経 験を積ませてあげることも将来的にはとても役立ちます。可能な限り新しい事にチャレンジしてみましょう。(学校ではこういった機会も増えると思います)

これらの具体的な方法や量に関してはそのお子さんによって異なってきますので、医師やリハスタッフへご相談下さい。

◆整形外科的治療について

脳性麻痺の療育における整形外科的治療の役割

年齢を重ね、身体的に成長していくにしたがって関節のかたさやそれに伴う動きづらさが出てきやすくなります。これによって潜在的な能力を最大限に発揮で きにくくなる(または獲得した運動機能を十分に生かしにくくなる)こともあり、リハビリだけでは対応が難しくなってくることがあります。その場合は整形外 科的治療が考慮されるでしょう。(幼児期頃より少しずつ導入されはじめ、学童期ではより多くなり、その後は徐々に減少する傾向にあるといわれています)
中枢神経系に障害のあるお子さんすべてに整形外科的治療が必要になるわけではないのですが、 定期的に診察を受けて経過(レントゲンやMRIなども含めて)をしっかりとみていくことは必要だと思われます。
整形外科的治療前はお子さんが術後に少しでも楽になるようにストレッチを継続して行うことが重要です。また、たくさん動いて体力や力をつけておくことも 必要になります。整形外科的治療後は運動機能を高めることや歩容を改善すること、変形・拘縮を予防するためにもリハビリとご家族の協力がとても重要になり ます。
いずれにしても、やみくもに整形外科的治療がされているわけではなく、レントゲン等も含めてそれまでの経過をみながら、医師が判断して勧めています。具 体的な所に関しては家庭や学校の状況など話し合いながら進めていくと思われます。疑問に思った所は遠慮せずに聞いてみてください。リハスタッフを含めて信 頼関係をつくっていくことで治療効果を高めるでしょう。

脳性麻痺の問題点とそれに対する評価・治療体系

◆重症心身障害児について

最近は障害の重度化、重複化が進んでおり、就学も大変なことが多いと思います。しかし、徐々に重度の障害をもつお子さんの就学率も小・中・高等部とも増 加してきています。教育現場では医療的ケアについては統一した取り組みの規定はなく、各自治体での対応は様々ですので、医療的ケア(導尿、気管切開部の管 理、痰の吸引、酸素吸入、鼻腔経管による食物や水分の注入など)やサポートがどの程度受けられるかを学校側に確認する事が必要になると思います。

★重症心身障害児にとって大切なことは
1)生活のリズムを整えること
2)栄養をしっかりととること
3)しっかりと排泄すること
4)十分に睡眠をとること
5)楽に呼吸すること

まずは以上の5つを医療スタッフや学校の先生方と協力して行っていくことです。
*長時間同じ姿勢のままでいること、一つの姿勢しかとらないことはなるべく避けましょう。
*表情などで快・不快、うれしい、悲しいなど多くの事が分かります。こういった所を見ながらコミュニケーションをとっていくことが精神面での安定につながっていくでしょう。また、表情はその日の体調を表していることも多いのでしっかりとみてあげることが大切です。

健康管理のポイント

・呼吸、体温、脈と血圧、尿 →→ エネルギーの運搬
・食欲、体重変化、便、皮膚の状態 →→ エネルギー摂取
・意識(睡眠覚醒)リズム、活動性、機嫌や表情 →→ 精神活動

重症心身障害児のライフサイクルと関連機関

筋ジストロフィー症児について

◆筋ジストロフィー症児について

いかに日常の生活を楽しく過ごし、充実したものとするかによって人生は大きく変わると思われます。例えばおいしいご飯を食べれる、テレビゲームができる、体育館で友人と遊べる、旅行にでかけられるなど…人によってそれぞれやりたい事は異なるでしょう。
当園のリハでは入園児を対象に、年2~3回、ADL活動の一環としてレクリエーションを行っています。中でも野球が人気で、年少児から年長児、電動車椅 子の人やウォーカーの人などが混じって、サイコロを使ったりボールの大きさを変えたり、その子に合わせた方法で行っています。(子供たちが率先してルール や方法を考えてくれることも多いのです。)
常に生活や行動範囲を広げ、視野を広げ、多くの人と関わっていくこと等でよりよい人生が過ごせるのではないでしょうか。このためにも医療スタッフや学校、家族の連携はもちろん地域の中でも様々な人々の協力を得ていく事も考慮していくとよいでしょう。

◆まとめ

子供が大人へと成長する過程で、障害児も同様に障害者となります。このため、障害に対するリハビリの継続と同時に社会活動(教育や就職、買い物等の社会経験を増やす事等)をバランス良くおこなって行くことが必要になります。

★乳幼児期でのリハビリの目標は、遊びの中に「欲求→行動→達成→満足」の流れを満たす中での様々な動作や姿勢を取り入れ、精神的な安定と運動発達を促していくことであり、療育の場の中心は家庭となります。
★就学前までのリハビリの目標は、移動能力を伸ばし、身辺動作(衣服の着脱や食事など)の自立を促し、補装具の使用なども考慮しながら様々な能力を獲得していくことです。
★就学後では新しい能力の獲得と同時に、将来も考慮しながら今持っている能力をいかにして維持していくか、いかにして学校や社会生活の中でそれを生かして いけるか(自助具を使用すれば一人でご飯が食べられる、トイレの手すりの位置や便座の高さを変えれば一人でできる・トイレに座っていられる、スイッチを工 夫すればパソコンを操作できるなど)を見つけることが目標になります。また、身体的障害にばかり捕らわれず精神面や社会面を伸ばしていき、大人になった時 に社会に少しでも参加し、自立していけるよう促していくことがこの時期の大きな目標となるでしょう。

自助具の例・トイレの例

成長するにつれて体が大きくなり、ご家族への介護の負担が大きくなってくるかもしれません。こんな時は無理をせず、医療スタッフや学校の先生などどなたでもよいので相談をしてみて下さい。社会資源の活用や介護方法などアドバイスしてもらうと良いでしょう。
地域や医療スタッフ、学校、家族が連携すること、ライフステージに合わせたその都度の対応と継続したサポートが何より重要です!! 無理をせずに相談をしてみて下さい。

まとめ

《参考文献》
1)千野直一、安藤徳彦:小児のリハビリテーション~病態とライフステージへの対応 リハビリテーションMOOK 8 金原出版株式会社:2004
2)江草安彦:重症心身障害療育マニュアル 医歯薬出版株式会社:1999
3)上田礼子:生涯人間発達学 三輪書店:1996
4)大川嗣雄、陣内一保:こどものリハビリテーション 医学書院:1991
5)栗原まな:小児のリハビリテーション 診断と治療社:2004
6)奈良勲、岡西哲夫:筋力 医歯薬出版株式会社:2004

秋田県太平療育園
医療科リハビリテーション部
理学療法士 野呂康子

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