Akit Physical Therapy Association

脳卒中のリハビリテーション もし脳卒中になったら・・・

1.脳卒中のリハビリテーション

脳卒中になり、薬物療法・手術治療など早期からの治療を行っても、残念ながら半身の手足が動かない、言葉がうまく出ない、触った感覚が以前と違うなどの 障害が残ることがあります。脳の細胞は皮膚のけがのように完全に治ることが出来ません。そのため自然治癒能力には限界があり、薬物の治療や安静だけでは障 害を克服することは出来ません。そこで、必要になってくるのが生活機能回復のためのリハビリテーション(トレーニング)となります。
リハビリテーションは色々な手段があり、一つは運動の麻痺など障害に直接働きかけ治療する方法。2つ目は生活や趣味の中で「ご飯を食べる、歩く、絵を描 く」などの活動を行えるよう援助しそれを成し遂げる方法。たとえば、右手でご飯が食べられなかったら、左手で食べるなど、その方法を違った角度からサポー トしたりします。3つ目は資金援助やボランティア、映画館に車いすが入れるような環境整備など、色々な参加を制約するものを社会全般から取り組もうという 方法。このような段階からどのような手段が適切か考え行われていきます。

2.リハビリテーショントレーニングにむけて

先に述べました、手足が動かないなどの脳神経の症状は、多彩であり個人個人に会わせてリハビリテーションが行われていきます。また、回復の仕方も人それ ぞれです。そこでその回復の期間に会わせた治療手段がとられます。おおよそ発症から3週間の救命と初期集中治療と並行して行う時期を「急性期」。運動能力 の回復が認められる3カ月くらいまでを「回復期」。今後の生活を維持していく「維持期」の3段階に分けて行われます。
脳卒中発症後、CTやMRIという脳の断層写真などから脳卒中の病態を予測し、細い血管が破綻した場合、翌日頃から開始します。太い血管がつまったり手術が必要な場合、1~2週間後からトレーニングが開始されます。いわゆる急性期トレーニングが始まります。

1)急性期トレーニング(発症直後の早い時期になります)

まずは動けるよう体を慣らす必要があります。脳卒中は、ほとんどの人が初めての経験ですから、どういうことが体に起こっているのか未体験となっていま す。たとえば日本からはじめて3000-4000m級のチベット高原のような高地に行って木材の切り出しを行い、宿舎を作る仕事をすることになったとしま しょう。急に出かけたのでは、空気が薄くすぐ疲労したり、頭痛・吐き気などの高山病に悩まされるでしょう。また、かなりの距離でも車や電車がなく歩く生活 となります。まずはこのような状態に慣れなければ、生活すること、いや寝て、食べて、排泄するるだけの生命活動自体も不自由でしょう。そのためはじめから 高度の高い現地には行かず、高めの山岳地帯にキャンプを張り段階的に体を慣らします。これと同じような状況で、脳卒中による未体験な状況を段階的に徐々に 慣らしていく必要があります。心臓や呼吸器機能、目線や運動時間など。更に大事な心の準備ができるようサポートします。この時期は集中治療のため、ベッド に寝かされ点滴や排泄のチューブ、流動食のチューブなど他の人の目からは悲壮感が漂う状況になっています。この時期ご家族など、周りの人間が動揺すれば、 本人も大きく動揺します。ここでは医療側を信じて、回復を信じて本人を支えていただければと思います。
つぎに障害の起こった側を治療するという前に、未体験な状況である運動の麻痺が起こっていない側(右半身の麻痺なら左半身)を積極かつ徹底的に状況把握 するような経験練習を行います。ようするに右足が障害されたとき、右足が動かしづらいだけでなく、左足への体重のかけ方がわからなくても歩行ができなかっ たりするからです。これは手足だけではなく、寝返りなどの背中やおなかなど体の半身も同様です。このようなトレーニングをまず行いここからやっと、障害し ている部分に対しトレーニングが開始されます。生活できるベースで体が慣れてきたら(麻痺していない側も含め)、脳卒中の病型や機能評価から設定した目標 を立て、それに合わせた回復のためのトレーニングを集中的に選択します。

2)回復期トレーニング(失われた活動能力をどんどん獲得する時期です)

急性期をすぎても運動麻痺など重度の障害ある場合、回復のため積極的にトレーニングを行います。実際に話す練習をしたり、服を着る、歩く練習をしたりし ます。そのための筋力トレーニングや各種治療体操など、普段目にするリハビリテーショントレーニングがこれにあたります。
脳卒中は多彩な障害を示すため、それぞれの症状をカバーする専門職がつきます。それらのスペシャリストがチーム一丸となり、患者さんや家族を支えていきます。そのうち特に運動方法を指導したりするスペシャリストが「理学療法」になります。
しかしながら脳の活動を停止した機能の回復には限界があり、別手段を学習する場面も出てきます。先ほどの高地での仕事で言えば、この時期からやっと仕事 の開始となります。木材を切るとしましょう。電気が近くまで通っていなく普段行っている電動ノコギリが使えません。手段としては手動で切る方法を習った り、それに見合う力をつけるなどがあります。別の方法として、お金を掛けて直接電気を通す方法もあります。両者とも木材を切る目的は果たせそうです。この ようにして宿舎を作るという目標を達成させるように仕事を完成させていきます。これと同じように脳卒中による半身の喪失で、右手で箸を使ってご飯を食べら れないのなら左手を使用したり、スプーンもしくは自助具といって便利グッズを用いて食べる。それでもだめなら、ヘルパーさんを雇って食べさせてもらう。信 条を別にすれば、食べるという活動は達成されます。これがリハビリテーションの階層的な考えとなります。

3)維持期トレーニング(習得したものを恒常的に行えるようにする時期です)

トレーニングを積んで、食事が出来る、仕事が出来る、趣味の俳句が書けるなど、色々な活動が取り戻すことができると社会復帰ということになります。
しかし、退院後の生活ではいろんな誘惑や不摂生で機能が落ちる場合もあります。また、脳卒中は高齢の方が発症することが多いので、年も重ねていくことで運 動能力や記憶の能力など種々の機能がどうしても落ちてきます。そのため機能を落とさないような維持トレーニング必要となります。また、定期的なメンテナン スも必要です。高地で宿舎を完成させても、何年もすれば故障も出てくるでしょう。やはりこれもメンテナンスが必要です。実際、運動能力が低下した方でも短 期間の入院トレーニングで運動能力が回復した人も多くいるという研究報告もあります。
この回復期から維持期のトレーニングに関しては、次回このコーナーで紹介予定です。

3.脳卒中で生じた障害は「害」ではなく、独自のスタイル、個性あるスタイルと考える発想転換を行いましょう。

障害を問題と捉えないで、自分の個性、スタイルだと思ってください。たとえばスリムな体系を維持したい。スタイルを保ちたいそう思うように、脳卒中の後 遺症があっても今の生活スタイルが私の自慢のスタイルだから維持するんだ、さらにステップアップするんだそう思って前に進みましょう。決して後遺症はマイ ナスではありません。リハビリテーションは、マイナスからゼロを目指すのではなく、個性あるプラスへ持っていこうとするものです。
最後に脳卒中は、急激に神経の症状が出る割に、回復には長い時間がかかります。焦らずゆっくりつき合っていく、そういうスタイルと考えて下さい。それは支える家族にもお願いしたいと思います。

秋田県立脳血管研究センター 高見 彰淑

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