Akit Physical Therapy Association

脳卒中のリハビリテーション まだ、リハビリがしたい!

1.リハビリテーションについて

リハビリテーションとは 「再び、できること」 という意味になります。これは、一旦停止してしまった脳機能が元に戻るということではなく、「元どおり の生活に戻る」 ことを目指していくということです。たとえ、機能の問題があってもQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を向上させて以前と同じ 社会生活を営むことができるようにリハビリを行なっていきます。

2.回復期のリハビリテーション

前月までに述べられてきたように、発症してから救急病院に入院し、急性期(発症直後の早い時期)の治療がひと段落して後遺症が少なく日常生活を問題なく 過ごせるまでに回復された方は、そのまま自宅へ退院するでしょう。しかし、残念ながら運動麻痺や言語障害、嚥下障害(食べること、飲み込みが困難になる) などが残ってしまった場合は、必要があればリハビリテーションを目的として、他の病院(リハビリ専門病院など)に転院することもあります。
いずれの病院でも、麻痺した手足の動きの回復や日常生活での各動作の獲得が目標になりなす。研究などでは、急速な回復は発症後3~4ヶ月から6ヶ月まで にみられると言われ、この期間が一般的に回復期と呼ばれています。発症後なるべく早くリハビリを開始することと、リハビリの効果の上がるこの回復期にリハ ビリを積極的に進めていくことで回復の程度が異なってくるといわれています。
ここで重要になってくるのは、残った脳の機能を100%活用するため、身体を動かすこと、実際に日常生活動作(食事をする、着替えをする、立ち上がる) を行なうことです。身体を動かすには、多くの筋肉を働かせる必要があります。その筋肉を働かせるには、脳からの命令が必要になります。脳細胞が働くことに より、それから出ている神経細胞に伝わって運動神経(身体を動かす神経)や感覚神経に情報を伝えていくことになり脳の活性化につながります。
それを手助けするのが、リハビリ専門のスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)となります。その他患者さんに係わる医師、看護師、ソーシャル ワーカーを含めたスタッフが患者さんを中心として医療チームを作り、家族と共に患者さんを支えながら進めていきます。

3.実際のリハビリテーション

最初にも述べたように、リハビリテーションの目的は『元どおりの生活に戻る』ことです。そのため、病院にいる間に可能な範囲で機能をアップさせていく必要があります。
ここでは、理学療法士の立場から一般的なトレーニング方法の一部を紹介したいと思いますが、誰にでも共通の決まったプログラムがあるわけではありません。患者さん一人ひとりに合わせて行なわれています。

1)関節拘縮(筋肉のこわばりや関節が硬くなる症状)を起こさないために

多くの場合は最初のうちは一人で動かせないため、理学療法士などに動かしてもらいます。麻痺のない側は患者さん自身に動かしてもらうようにします。
手の運動は、両手を組んで(または麻痺側をつかんで)腕を上げ下ろしたり、肘も曲げ伸ばしします。ただし、肩の痛みがある場合は、無理のないようゆっくり行なってください。肩は痛めやすい関節なので注意してください。
足の運動は、足全体を屈伸していきます。勢いだけではなく、なるべくゆっくり行なうようにしましょう。麻痺側の足に力が入りにくい人は麻痺していない側 で助けてあげてもいいでしょう。長いこと足を動かさないでいると、ハムストリング(膝を曲げる筋肉の総称)の短縮を招くこともあるので、膝を伸ばしたま ま、足を上げる練習(一人で困難な場合は他の人に手伝ってもらう)が必要になります。また、足関節も短縮しやすいので、自力で動かせない方は腰掛座位で両 足の踵をしっかりとつけるように心がけると、尖足(アキレス腱が硬くなって踵が地面につきにくく、つま先だけつく状態)を防ぐことができます。

2)日常生活動作を取り戻すために

基本的な3つの動作の習得が必要になります。(1)姿勢をかえること、(2)変えた姿勢を保つこと、(3)必要に応じて移動する、ということが重要になります。
リハビリの時間以外でも、状態の許す範囲で自分で身体を動かしましょう。ベッドの上でできることは、まず、仰向けに寝て両膝を立て、開閉したり、腰を浮 かします。これは、弱くなりやすい大殿筋、大腿四頭筋などを強化することで座位や立ち上がり、立位での助けになります。また、ベッドに腰掛ける時間を長く するだけで、首や腹筋、背筋を使うことになります。ただし、両足がきちんと床に接地していないと不安定になりやすく転倒する危険があります。片麻痺の患者 さんは、特に感覚障害のある方だと臀部からの感覚も感じにくくなるので、麻痺していない側の臀部に体重が多くかかりやすくなります。そのような方は、姿勢 が崩れたまま座っていることに気づけず、このままの姿勢で固定されてしまうことになります。なるべく左右対称で安定した状態をつくることで、座位姿勢でで きる身の回り動作が確立されていきます。

3)移動動作

移動の方法には、歩行、車椅子、いざり、四つ這いなど、身体の状況によって様々です。また、住まいの環境(和式生活か様式生活かなど)や介助の程度により違ってきます。今回は、歩行について述べていきます。
私たちは、どのように歩くかということを意識してはいないと思います。それは、脳が私たちの身体をコントロールして、自然の歩きをさせてくれているのです。
まず、安全に歩く練習のための準備をしていきます。歩くためには、最低きちんと立ち上がれ、安定して立っていられることが基本です。さらに、左右の足に 体重移動ができてバランスがとれるか、麻痺側の足で支持しながら麻痺していない足を一歩でも前に踏み出せるか、ということが重要になってきます。
歩き方にはいろいろな方法がありますが、何も使わず歩けるのが一番良いのですが、杖を使用してもいいので安全に歩けることを目指していきます。杖にも種 類はたくさんあるので、どのタイプが自分に合うのか理学療法士に相談してください。また、麻痺側の足関節に力が入らず引きずってしまう方、または、足全体 の緊張が強く、足関節が変形し足底を床に充分に接地できないような場合は、歩行を安定させるために装具を作製する必要があります。杖と同様に理学療法士に 相談してみてください。
歩行の練習の際、無理して急いだりしないでください。最も適した歩き方で長い時間歩けるようになれば、自然に速度も速くなっていくでしょう。それから、 慣れてきたらば階段や段差越え、坂道を歩いたりすることも今後、行動範囲を拡大するために必要になるでしょう。
基本的には、運動を開始していく時は理学療法士などから指導を受けてから進めてください。家族などが介助する場合は、全ての動作において、安定するまでは倒れるおそれのある麻痺側にいるようにし、安全に行なうようにしてください。
最後にリハビリ室だけが、トレーニングの場ではなく、24時間の生活全てがトレーニングの場だと考えてほしいと思います。そのためには、日常生活を行な いやすい環境を整えることが必要になり、それが、患者さんの意欲を高めていくことにもなるのではないでしょうか。

中通リハビリテーション病院 水堀 美幸

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