Akit Physical Therapy Association

世界で活躍する理学療法士 -青年海外協力隊の活動から-

「青年海外協力隊」という言葉を耳にしたことはありませんか?最近はよく話題にあがるので、一度は聞いたことのある人も多いと思います。しかし、その内 容を知っている人は意外と少ないと思います。発展途上国に行って、井戸を掘ってくるイメージがいまだに強いかもしれません。そこで今回は、理学療法士の青 年海外協力隊(以下、協力隊)活動を通して、つまり私の経験から、少しばかり協力隊のことを紹介したいと思います。

理学療法で協力隊の話とは意外と思われるかもしれませんが、全国の理学療法士の協力隊派遣者数はこれまでに48カ国に133名を数えます。秋田県からは 1名の理学療法士が現在、ジャマイカ(中南米)で活躍中です。そして、理学療法士以外の職種(例えば農業指導者や教師など)でも多くの人が協力隊に参加し ていますが、それらを数えると秋田県はこれまでに238名(平成13年3月31日現在)を海外に送り出しているのです。知っているようで知らない協力隊。 協力隊に触れながら、暫し思いを海外に馳せてみようではないでしょうか!

私が青年海外協力隊に参加したのは平成6年から2年間で、活動した国はアフリカのマラウイというところでした。そこは東アフリカに位置し、タンザニアやザンビアに囲まれた内陸国でした。赤茶色の風と、真っ赤な太陽の匂いが今も脳裏でざわめきます。

さて、理学療法士の派遣国はどこが一番多いかというと、地域別ではアジア地域が30%を占めて、ダントツに多くなっています。国別で見ると、マレーシ ア、マラウイ、コスタリカ(中南米)の順になっています。この他にも、トンガなどの大洋州やエジプトなどの中近東、ポーランドなどのヨーロッパ地域にも派 遣されています。考えるだけでゾクゾクするのは私だけでしょうか? 派遣国は本人の意見が尊重されつつも、適応力などを総合的に判断して決定されています。

私の話に戻ります。溶けてしまいそうな熱気の中、毎日通っていたのはベッド数900床のリロングェ中央病院でした。活動内容は、理学療法科で患者さんの 治療と現地スタッフへの技術移転をしていました。理学療法科に来る患者さんには、アフリカらしいエピソードもありました。例えば、ゾウに踏まれて足の骨折 をした人や、アフリカンマジックという秘伝の技を使う伝統医療を受けて火傷を負った人などがいました。また、心配していた言葉は、日本語と英語と現地語の チェチェワを巧みにミックスして、何とか意思の伝達ができていました。とても重宝した英語は「like this」でした。「こうやって」と手取り足取り伝えていれば、難しい言葉を使わなくても技術を伝えることができていました。また、多くの発展途上国では 地方と都市間で医療、リハビリテーションサービスの量・質に大きな格差があるため、地方の人に十分なサービスを提供できないことが問題になっています。で すから、村への巡回リハビリテーションが必要になります。私も村へ巡回をしていました。地平線まで伸びた道が陽炎でゆらゆら踊る中、大きな木の下で青空リ ハを開いたこともありました。村では福祉用具が手に入りにくいため、そこにある木などを利用して治療用椅子や杖などを作ることも必要でした。協力隊の活動 では、従来の理学療法士の枠を越え、組織や職場の管理から、スタッフ・住民への教育など多くのことを体験することができました。

また、理学療法士としてだけではなく、1人の人間として多くのことを吸収できたと思っています。足元から世界を見られる視点は、海外で暮らした人に共通 して得られる大きな財産だと思っています。私の海外への関心は今でも尽きることなく、ますます大きく膨れ上がってきています。現在ではアジアを中心として 地域に根ざしたリハビリテーション(Community Based Rehabilitation:CBR)について調査、研究を行っています。

さて最後に、理学療法士の協力隊参加の平均臨床経験年数は4年ですから、若い人が力を発揮でき、また多くのことを学べる場になっているのではないかと 思っています(協力隊への応募資格は満20歳から満39歳です)。最近の傾向としては、協力隊の女性の参加が多くなり、全派遣人数の約半数を占めてきてい ます。さらに国際協力の関心が幅広い年齢層に広がる中で、満40歳から満69歳までの人が参加できる「シニア海外ボランティア」事業が開始されました。現 在1名の理学療法士がシニア海外ボランティアとしてラオスで活動しています。

もちろん協力隊だけが世界に飛び出せる窓ではありません。身近を探すと案外たくさんの窓がある事に気づきます。グローバリゼーションといわれる中、理学 療法士に対する国際貢献への期待はますます高まってきているので、今後もその期待に応えていきたいと考えています。

多少色あせた記憶の糸をたぐり寄せながら、協力隊のことについて書いてみました。皆さんとは病院でお会いすることの多い理学療法士ですが、別の一面にも ふれることができたのではないかと思います。世界で活躍している多くの理学療法士がいることをお伝えできたことをうれしく思います。

秋田大学医療技術短期大学部
理学療法学科 大澤諭樹彦

【世界で活躍する理学療法士 ~番外編~】
日本理学療法士協会では国際部が中心となり、世界で活躍することを夢見る理学療法士を影で応援しています。
その一環として留学や国際協力、国際学会などの情報を提供しています。関心のある人は公益社団法人日本理学療法士協会国際部ホームページを訪ねてみてはいかがでしょうか?

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