Akit Physical Therapy Association

「腰 痛」 秋田魁新報社朝刊(平成11年6月6日)健康欄 掲載記事

腰痛を訴える人が、文明の進歩とともに増えてきているといわれています。歩ける距離も車を使い、家では不自然な姿勢でテレビを見る。このような肉体と姿勢を衰退させる生活が、腰痛を増やしているというのです。

腰は、四本足のご先祖が二本足で立って歩いてから、人間の弱点となりました。この進化は、物干しざおのように横になっていた背骨を立ち上げたのです。立ち上がった背骨は、骨盤が受け止めました。 ところが、この骨盤ですが、背骨を受けた面が、地面に対して約三十度前方に傾いているのです。このため、骨盤のすぐ上の腰の骨には、骨盤から前へすべり落 ちようとする力が常に働くのです。まさに、腰の骨はすべり台に乗った積み木のような状態です。すべり落ちないようにしているのが、腹筋と背筋の働きです。 こんな宿命を負った腰に、筋肉や姿勢の衰えが加わったら、容易に腰痛が起きても不思議ではないのです。

近代文明とともに増えた腰痛の治療と予防に効果的な方法は、腰痛体操で腹筋と背筋の働きをよくし、日常生活でよい姿勢を保つことです。六種類ある腰痛体操のうち簡単にできる体操二つとよい姿勢を保つポイントを紹介します。

初めは、腹筋を強 化する体操です。背筋は、地球上に立っているだけで常に重力に対抗して活動しますが、腹筋はそうではなく、意識的に鍛えないと弱くなります。腹筋を鍛え、 腰の負担を減らしましょう。強くなった腹筋は、筋肉で作られた自然のコルセットです。やり方は、ひざを立てたあおむけの状態から頭を持ち上げ、上体を少し 起こします。 次は、背筋のストレッチです。痛みは筋肉を緊張させます。背筋は突っ張って縮み、板のように固くなります。背筋を伸張し、虹のように曲がる背骨にしましょう。やり方は、ひざを立てた仰向けから、両手で両ひざを抱え込みゆっくり胸まで引き寄せます。 最後は、日常生活でよい姿勢を保つポイントです。よい姿勢とは、気を付けのような努力がいる姿勢ではなく、もっと楽な姿勢です。頭を風船に例え、風船に背骨がぶら下がっているつもりで立ったり歩いたりしてみて下さい。この感じが、よい姿勢です。

ふだん、腰に悪い姿勢を避けることも大切です。悪い姿勢の代表は、顔を洗うときの格好です。ひざを伸ばしたまま前にかがむ中腰姿勢は、ぎっくり腰を起こしやすいのです。荷物を持ち上げたり、物を拾ったりする動作では、ひざを曲げることをお勧めします。

腰痛は、ほぼ全ての人が人生に一度は経験するといわれています。今から、自分の腰を自分で管理してみてはいかがでしょうか。 ただし、体操と姿勢で腰痛が全て治ると考えられても困ります。肥満やストレスも腰痛に関与しますし、また、腫瘍(しゅよう)など自己管理できない腰痛もあります。安静にしていても痛みが強くなるような場合は、迷わず医師に相談して下さい。
※この文章は秋田魁新報社朝刊(平成11年6月6日)健康欄に掲載されたものです。

腰痛

市立秋田総合病院 
リハビリテーション科主任 高橋仁美

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