Akit Physical Therapy Association

「脳卒中」 秋田魁新報社朝刊(平成11年11月28日)健康欄 掲載記事

日本では、脳卒中で倒れてしまった場合、その場に寝かせたまま絶対に動かしてはならない、といった対処をしていた時代
ありました。脳卒中の治療は、とにかく安静第一と考えられていたのです。しかし、現在では、一刻も早く病院に運び、脳卒中そのものの治療と同時に、リハビ リを並行して行うのが理想とされています。とはいっても、発症直後からリハビリを行うのは、かえって病状が悪化するので、落ち着いてから始めるべきだと 思っている人が、まだまだ多いのも事実です。リハビリというと、痛くても我慢しなければならない過酷な訓練、といった誤ったイメージがあるからなのでしょ うか。
実際に行う、発症当日あるいは翌日のリハビリは、患者への負担はほとんどありません。しかも、当然ですが、全身状態をきちんと確認し、慎重に行うので安 全です。意識もはっきりしていないのに、いきなり立たせたりはしません。急性期のリハビリは、安静によって起きる弊害を予防することが目的なので、運動量 もごく軽いのです。
急性期では、安静にして寝ているために二次的な合併症が生じやすくなっています。関節が固まったり、筋肉がやせたり、床ずれが起きたり、といった具合で す。このような合併症の存在は、その後の経過に大きな影響を及ぼします。合併症の有無は、最終的に自立して行動できるレベルを決める要素となるです。つま り、急性期に行うリハビリは、二次的な障害を防ぐばかりでなく、残された能力を最大限に発揮させるためにも重要なのです。例えば、お年寄りの場合は、一般 には安静が必要と思われがちです。しかし、実はお年寄りほど、合併症が起きやすい状態にあるので、より早期のリハビリが必要なのです。実際、早期にリハビ リを開始すると、自立して歩ける度合いも高くなる結果が出ています。

それでは、急性期に行う代表的なリハビリを紹介しましょう。良肢位保持、体位交換、関節可動域訓練の三つです。良肢位保持とは、正しい姿勢で寝かせるこ とで、関節が固まったり、手がむくんだりするのを予防します。体位交換では、二~三時間ごとに横向きにしたりして、床ずれが起きないようにします。関節可 動域訓練とは、関節を動かしてあげることをいい、関節が固まってしまうのを防ぎます。 急性期のリハビリの大切さが、お分かりいただけたでしょうか。ただし、早期にリハビリを行うと手足の動きなど、すべてが完全に元通りになるわけではない ことを知っておいてください。最善を尽くしても、なんらかの障害が残ることが多いのです。だからといって、失われた機能の回復だけにとらわれてはいけませ ん。リハビリには、残された能力を最大限に活用するという真のねらいがあります。リハビリの究極には、「新しい人生を築いていく」という、前向きの目標が あることを忘れてはいけません。
※この文章は秋田魁新報社朝刊(平成11年11月28日)健康欄に掲載されたものです。

市立秋田総合病院 
リハビリテーション科主任 高橋仁美

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