Akit Physical Therapy Association

「腹式呼吸」 秋田魁新報社朝刊(平成11年5月2日)健康欄 掲載記事

呼吸不全のリハビリテーションの一つに皆さんもご存じの腹式呼吸があります。腹式呼吸は呼吸リハビリテーションの基本で、ほとんどの呼吸器疾患に適応となります。まずは、実際に呼吸リハビリテーションを行った患者で腹式呼吸の効果をみてみましょう。

平成元年から息切れの症状がある慢性閉塞(へいそく)性肺疾患の六十四歳の男性のケースです。昨年の呼吸リハビリ開始前は、息切れが強く、五十メートル程度を歩くのも歩行器を利用して休み休みでやっとという状態で、日常生活にかなり支障を来していました。

一カ月の腹式呼吸を中心とした呼吸リハビリの後には、息切れがかなり軽減し、歩行器を使わないで続けて二百メートル歩けるようになりました。このように腹式呼吸は、息切れなどを軽減させるのに有効なのです。

それでは、なぜ、 腹式呼吸が呼吸不全の患者に効果があるのでしょうか。腹式呼吸は横隔膜の働きが主となる呼吸法です。横隔膜は呼吸の主要な筋肉で、健常な人が安静呼吸する ときで約八十%の役割を担っています。しかし、呼吸不全の患者は、首や肩の筋肉を使った浅くて速い胸式呼吸になりがちです。これでは腹筋が緊張し横隔膜の 動きが妨げられ、腹式呼吸がうまくできなくなります。結局、胸式呼吸は、呼吸に努力がいり、無駄なエネルギーを使い、息切れを引き起こすことになるわけで す。ところが、呼吸不全の患者が腹式呼吸ができるようになると、首や肩を使うエネルギーを必要としないため、効率の良い呼吸が可能になり、息切れも軽減す るのです。車で例えるならば、燃費が非常に良くなるのと同じことでしょうか。

さて、今回テーマ とした腹式呼吸ですが、健康法として取り入れている人もいるようですので、具体的なやり方を紹介しておきましょう。おなかを膨らませながら鼻から息を吸 い、おなかをへこませながら口をすぼめて口から息を吐きます。呼吸のリズムは、二~三秒かけて息を吸い、吐くときはその二~三倍の六~七秒掛け、一分間で 六~七回程度を目標とします。通常の呼吸が一分間に約十五回ですから、腹式呼吸は通常よりゆっくりとしたリズムになります。

姿勢は、膝を曲げ たあおむけから始めるのがよいでしょう。熟練すれば、歩いたり、階段を昇るなどの日常生活の中で取り入れることができるようになります。ただし、気をつけ てもらいたいのは、深呼吸のし過ぎです。深呼吸のし過ぎは、かえって呼吸が苦しなったり、手足がしびれたり、また頭がぼーっとして、ひどい時には意識を 失ったりすることがあるので、注意が必要です。

腹式呼吸を、皆さんもやってみてはいかがでしょうか。
※この文章は秋田魁新報社朝刊(平成11年5月2日)健康欄に掲載されたものです。

市立秋田総合病院 
リハビリテーション科主任 高橋仁美

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