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「バリアフリー」 秋田魁新報社朝刊(平成12年3月19日)健康欄 掲載記事

若い人や健常な人にとっては不自由がない家でも、高齢者や障害者にとっては不慮の事故を発生させる危険な住宅となるようです。たった二センチの敷居の段 差につまずき、転倒して骨折したりするのです。このような家庭内の事故は死に結びつくことも多く、高齢者の死亡要因の調査では、交通事故の死者数よりも上 回っているという結果が出ています。

住宅内で起きる転倒などの事故を未然に防ぐには、段差などの障壁(バリア)を取り除くと効果的です。身体の障害の内容や機能低下の程度を的確に把握したうえで、その人その人なりの日常生活動作に応じた住宅に改造するのです。このようにして改造された住宅がバリアフリー住宅です。

バリアフリー住宅は、高齢者や障害者の自立を促し、安全な生活を送ることを可能にしてくれます。同居する人にとっては、介護面や精神面での負担の軽減につながるわけです。つまり、バリアフリー住宅は、家族全員に安心と安全をもたらしてくれるのです。できるところからでも、少しづつ対応してみてはいかがで しょうか。

ただし、実際に住宅をバリアフリー化する際には、専門家に相談してください。ここでいう専門家とは、建築関係者だけをいうのではありません。リハビリテーションの専門家ともよく相談して家屋を改造することをお勧めします。高齢者や障害者の身体機能や動作能力などを評価してもらい、実際に現場を見せた上 で改造に着手すれば、かなり快適な住いに変身するはずです。

例えば、手すりは、立ち上がったり、しゃがんだりする動作を補うためには欠かせませんが、取り付ける際には、ただやみくもに付けはいけません。位置が高すぎたりしては、支えの補助として使えなくなります。取り付ける位置、握りの太さ、形状などは、身体機能や動作能力に合わせた対応が必要なのです。

ここまで、生活の基盤となる家の中のバリアフリーについて述べてきましたが、家の外も見直していく必要があることはいうまでもありません。高齢者であれ、障害者であれ、地域の中で普通に暮らせる社会づくりを考えなければいけないのです。そのためには、物理的なバリアばかりでなく、心理的なバリアも取り 除く必要があります。

一般に私たちは、お年寄りや身体の不自由な人などに対して、保護したり、何かを与えてあげることが、善意だと思っているのではないでしょうか。しかし、この心の中には、バリアが存在しているように思えるのです。

バリアフリーの考え方では、何かをしてあげるというよりは、障害者や高齢者を地域社会の中に積極的に受け入れ、自立を促すことを重要視します。障害のあ る人も、ない人も、お年寄りも、若い人も、すべての人が社会を構成する同じ仲間として、互いに役割を持ち、助け合っていく社会を目指すべきではないでしょ うか。「共生共創」の考え方は、バリアフリー社会の原点なのです。
※この文章は秋田魁新報社朝刊(平成12年3月19日)健康欄に掲載されたものです。

市立秋田総合病院 
リハビリテーション科主任 高橋仁美

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