Akit Physical Therapy Association

「住宅改造例の紹介」

私たちは、身体に障害が残っ てしまった患者さんが退院される際、家屋の環境を整備するようにお勧めすることがあります。大がかりな改造になることもありますが、手すりをつけたり、家 具の配置を換えるだけのときもあります。ここでは手すりを設置することでトイレへ行けるようになった患者さんをご紹介します。

この方は、70歳の女性です。脳卒中で入院しましたが、歩けるようになり退院したそうです。しかし、徐々に杖や老人車を使っても歩けなくなり、当院へ入院されました。手足の動きはよいのですが、体のコントロールが悪く、一人で歩くのは大変危険でした。

退院に際し、ご本人が一番困っていたことはトイレへ行けないことでした。病院では車椅子や老人車を使用し歩けましたが、ご自宅では廊下も狭く、段差もある ため、それを使用することはできませんでした。ポータブルトイレを使うことも検討したのですが、後始末をする人がいないため、断念。結局手すりを設置して 歩いていくことにしました。手すりをつける場所については、ご自宅へ伺ってご家族と相談しながら決めていきました。しかし、建具が多く手すりの取り付け場 所にはずいぶん迷いました。柱や建具自体を利用することにしました。両手でつかまると歩くことが出来るので、廊下の片側に手すりをめぐらし横歩きで移動し ます。手すりを設置する場所のない居間では老人車を押して歩き、立ち上がりが必要な所・方向転換する場所・段差のある場所には縦の手すりを設置しました。

準備が出来てから外泊をし、実際に試していただいて退院となりました。先日、ご自宅へ伺ってきましたが、一人でトイレへ行けるようになり、家族の方が働きに出ている日中も夫と二人で過ごせるという自信がついたようで、入院していた頃よりも明るい表情を見せていました。

「排泄」は、一日に何度も行かなければならず、時間も決まっていないため、その方法が確保されなければ自宅で過ごすことは難しくなってしまいます。この方の場合もトイレへ行けるようになったことで、家庭復帰できたと思っています。

私の場合は、鋸・かなづちを持って実際に改造することは出来ませんが、「どのくらい歩けるか」「どのくらいの段差なら越えられるか」等の患者さんが出来る ことをお知らせしたり、「これを使えば出来る」「こちらの方がやりやすい」といった環境の工夫や動作のやり方をアドバイスすることが出来ます。これからも ご本人・ご家族と共に検討していくという形で関わっていきたいと思います。

【改修例のご紹介】

障害を持った人が病院や施設から自宅へ戻るとき、日常生活を安全に、そして介護者の負担を少なくして生活することが大切です。そのためには、家屋の改造が必要な場合もあります。以下に、当院で関わったおふたりの改造例を紹介します。

例1:脳卒中で右半身麻痺となった、 63歳の男性です。歩くことは困難で車椅子が必要、日常生活はほぼすべてに介助が必要でした。入院中に自宅の新築をすることになり、車椅子で生活できるようにアドバイスをしました。

玄関玄関はホールの半分をスロープにし、車椅子に乗ったまま外出できるようにしています。車椅子を使用する場合はスロープにしたり、段差を解消するか、あっても低めに設定することが大切です。玄関の改造は、引きこもりがちといわれる障害者が外との出入りをしやすくすることで、外出の機会を増やし社会参加できるととも に、緊急時のスムーズな対応にもつながります。


トイレトイレは、 車椅子がトイレスペースに入るように広くしています。また麻痺していない手足が壁側になるように便器の位置を設定し、縦手すり(立ち上がりの補助)と横手すり(座位安定の補助)を設置しています。便器の高さは立ち上がり易さ、座位の安定のためにも、車椅子と同程度にしています。


浴室浴室では車椅子のまま浴槽まで近づき、ターンテーブル付入浴補助器に移り、浴槽に入ります。入浴動作は難しい動作なので、介護者の負担や安全性を考えると入浴用 介護機器を使うことも有効な選択肢です。また、洗体はシャワー椅子を使用することで、介助が楽になりました。浴槽の高さ(洗い場から浴槽の縁)は、このケースの場合40cm程が好ましいと思われます。


例2:次にご紹介するのは、 62歳の男性です。脳卒中による半身麻痺で、杖と装具を使うと、屋外もひとりで歩けます。日常生活もすべて自立しています。入院中に理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカーが自宅を訪問し、改造箇所などのアドバイスをしました。

玄関玄関は、高い上がり框を3段にし、横手すりも設置し、昇降が楽に出来るようにしました。また、玄関内に椅子を常設し、安全な座位で靴の着脱を行えるようにしました。

しゃがむことが大変だったため、トイレは和式から洋式便器に取り替え、横と縦の手すりを設置しました。


浴室浴室は、廊下との段差を解消するため、洗い場にすのこを設置しました。また、浴槽と同じ高さの腰掛けスペースや、手すりも設置しています。浴槽への出入りはこのスペースに腰掛けてから行うことで、転倒の危険性がなくなり自立できています。

改造したことで、介助がいらなくなったり、また安全に動けるようになったりと、毎日の散歩や外出訓練、リハビリ学級やデイサービスと積極的に外出し、生活を楽しんでおられます。

改造は、患者さんの能力によって必要箇所や方法が異なります。また資金面でもできるだけ費用のかからないように、社会資源や公費による貸付・給付を活用したりします。専門職(理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカー)に相談することが良いでしょう。

大がかりな改造からちょっとした工夫まで、環境を整えることで生活がしやすくなります。大切なのは、使う人にとって最も使いやすくなること。手すりをつけて も、つける高さや位置によっては邪魔になることさえあるのです。私たち理学療法士は、患者さんが動ける能力や家族の介助できる限度も考慮して、アドバイス をさせていただくことができます。お気軽にご相談下さいね。

中通リハビリテーション病院 大場みゆき

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